かつてホールドしていた銘柄を、改めて見直すシリーズ。今回は、「幼児活動研究会(2152)」を振り返ります。変な名前の会社を見ると脊髄反射で買ってしまうため、見つけた瞬間買ってしまいました。社名に興味を持ち、色々調べていると社長の山下さんもかなりの変人。著書を読んでみましたが、これはかなりぶっ飛んでるなと思い、大ファンになった記憶があります。
売却してもう何年も経ち、しばらく監視していなかったのですが、改めて幼児活動研究会の現状と今後の展望を見ていこうと思います。
幼児活動研究会のビジネスモデル
幼児活動研究会は、幼稚園や保育園に講師を派遣し、正課体育指導を行うほか、園の施設を利用して課外体育指導や未就園児教育を提供する「コスモスポーツクラブ」を運営。また、全国約1,000園以上の経営コンサルティングや職員研修、教育サポートなども手がけています。最新の有価証券報告書によると、幼児体育指導活動関連事業が売上の95%を占めています。
同社の強みとしては、この業界における最大規模である点でしょう。同業者は数多く存在するようですが、その大半が小規模な事業者とのこと。その中で、同社は2024年3月期末時点で、正課体育指導の実施会場数は1,253園、課外体育指導の実施会場数は1,280カ所と、全国規模で多くの園と契約を結んでいます。規模の経済力を生かせるビジネスではありませんが、全国規模で展開している上場企業というのは、小規模事業者に対して大きなアドバンテージではないでしょうか。
幼児活動研究会の業績
年度 | 売上高 | 経常利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2007年 | 35.4 | 3.0 | 1.5 |
2008年 | 38.3 | 3.3 | 1.7 |
2009年 | 42.1 | 3.8 | 1.9 |
2010年 | 46.5 | 4.4 | 2.3 |
2011年 | 49.0 | 5.0 | 2.8 |
2012年 | 50.2 | 5.2 | 1.3 |
2013年 | 54.5 | 7.5 | 4.1 |
2014年 | 56.3 | 7.6 | 4.1 |
2015年 | 59.9 | 8.0 | 4.6 |
2016年 | 61.7 | 8.5 | 4.9 |
2017年 | 64.6 | 10.2 | 8.5 |
2018年 | 65.9 | 11.2 | 7.6 |
2019年 | 68.0 | 12.8 | 8.2 |
2020年 | 67.3 | 11.5 | 7.9 |
2021年 | 55.0 | 7.8 | 5.2 |
2022年 | 66.2 | 14.0 | 9.6 |
2023年 | 69.2 | 14.9 | 10.8 |
2024年 | 69.5 | 13.9 | 9.7 |
過去の業績を見ると緩やかながら、増収増益という素晴らしい経営内容。2020年度と2021年度に少し落ち込んでいるのは、おそらくコロナ禍の影響と思われます。
成長がゆるやかなのは、人材育成に時間がかかることが理由の一つでしょう。スポーツを教えるにあたり、知識だけではなく一定の身体能力も求められると思います。知識があり、教えることができ、それなりの身体能力を有する人材は集めるのも育てるのも時間がかかるのではないでしょうか。売上=指導者の数なので、この点は仕方ないかもしれません。コスト的な面では、場所は幼稚園などの敷地を利用するので出店費用や設備投資の必要もなく大半は人件費だけで済みそうです。
業績に対する株価でみても、緩やかながらしっかりと上がり続けています。ただ、上場時の500円前後で買っても2倍ちょいという上げ幅なので、投資家として儲かる企業だったかというと微妙なところです。配当利回りの低さ、株主優待が無いという点から考えて、長期で持ちにくい企業かもしれません。2025年1月の段階でPER15倍、PBR1.45倍なので、フェアバリューというところでしょう。
今後の展望
基本的に現在のビジネスモデルを広げるつもりはないと、昔語っていましたが今もその考えに変わりはないようです。よく少子化が逆風になるのではないかと考えられますが、子供一人にかかる教育費は年々上昇しています。実際に、過去から現在にかけて幼児活動研究会の業績は上昇しています。
加えて、教員の負担軽減のために学校のクラブ活動が見直されつつあります。実際に兵庫県神戸市の中学校では、2026年以降の部活が廃止されます。対象年齢は異なるものの、これまでのビジネスの延長としてとらえることができれば、幼児活動研究会にとってスチャンスになるかもしれません。
まとめ
昔、幼児活動研究会に入れ込んでいた時に山下社長の著書を読んだのですが、その中で「増収増益」「無借金」へのこだわりをとても感じました。久し振りに決算書を見てみましたが、今でも見事に無借金。さすがです。増収増益であることと合わせて、とても優れた企業運営がなされています。ちなみに自己資本比率は75%以上と万全の財務内容。完全に無双状態。
ただし、山下社長は投資家寄りの姿勢はまったくありません。上場時のインタビューで「会社の信用力を上げるために上場しました。投資家のことは気にしません。嫌なら買わないでください」的なことを言い放ち、インタビューアをドン引きさせていた記憶があります。
会社のホームページを見ても、IRのリンクはTOPメニューになく、一番下のメチャクチャ小さいところにしかありません。しかもIRページだけはスマホ対応にしていないという徹底ぶり。そのせいもあり、配当利回りは約1.5%とかなり渋め。いうまでもなく株主優待など存在せず。株主総会で「株主優待を出してほしい」なんて言ったものなら、グーで殴られるかもしれません。
山下社長は、ジャージ姿でたった一人の状態から会社を立ち上げ、上場企業まで育て上げた傑物。そんな人物なので、著書を読むとまあまあの変人だなと強く感じます。ちなみに著書で一番大好きなエピソードは、社員の掃除意識を高めるあまり、便器の水で顔を洗わすことろです。(今はもちろんしてません)
山下 孝一 (著)
成長の秘密、それは、人を育てる原点で経営を貫くことにあり! 落ちこぼれ経営者が落ちこぼれ社員とともに歩んだ30年。幼児体育指導という新事業を開拓し、少子化・不況下に成長し続ける会社の軌跡。
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