テクノメディカ|往年のエクセレントバリュー銘柄

かつてホールドしていた銘柄を、改めて見直すシリーズ。今回は、「テクノメディカ(8699)」を振り返ります。私が投資を始めた2000年代初頭はバリュー投資ブームでした。その中でもテクノメディカはバリュー投資家で人気の銘柄で、「テクノメディカを持たざる者バリュー投資家にあらず」的なものがあったのを覚えています。私も一時期保有していましたが、いつの間にか売り払って、記憶の彼方へ消え去っていました。

テクノメディカは2003年に上場しており、2025年で上場して22年が経過します。かつてバリュー投資家で持て囃されたテクノメディカを持ち続けていたら、果たして儲かったのか?そんな訳で、テクノメディカの推移と今後の展望などを確認してみます。

テクノメディカのビジネスモデル

テクノメディカは「採血管準備装置」と「採血管ラベルプリンター」など医療機器の開発・製造・販売を行う企業。テクノメディカの主力製品である採血管準備装置は、国内市場におけるシェアは約90%と高く、競合他社はほとんど存在しません。

さらに、採血管準備装置や採血管ラベルプリンターの運用には、専用の消耗品(試薬やラベル用紙など)が必要とします。これらの消耗品供給は安定した収益源となっており、装置販売後の収益継続を支える重要な柱です。

他社の参入を許さず市場を独占し、消耗品供給による定期的な収益が得られるストックビジネスという、バリュー投資家視点から見ると、なかなかのエクセレントカンパニーと言えるでしょう。

テクノメディカの業績と株価

決算年 売上 経常利益 純利益
2001 30.1 4.5 2.4
2002 34.2 6.6 3.0
2003 40.1 8.0 4.4
2004 44.6 10.3 5.9
2005 47.0 11.1 7.2
2006 53.6 12.0 7.5
2007 59.1 12.4 7.5
2008 66.7 13.8 8.7
2009 67.3 13.9 8.5
2010 70.6 12.7 7.8
2011 75.6 14.6 9.3
2012 79.8 18.3 10.7
2013 81.5 19.4 12.4
2014 90.0 21.6 13.6
2015 95.2 23.2 14.9
2016 90.3 16.5 12.0
2017 84.6 13.9 4.6
2018 86.5 14.9 13.1
2019 93.3 15.4 11.0
2020 98.1 12.7 10.0
2021 90.4 16.3 11.5
2022 97.0 18.5 12.8
2023 93.7 16.7 11.5
2024 102.8 18.7 13.5
(億円)

2003年の上場後、2008年までは売上、経常利益、純利益ともに毎年10%近い成長が続きます。その後やや成長速度が緩やかになり、2014年以降は売上90億円前後で足踏み状態。

採血管準備装置が国内のトップシェアということで市場が成熟し、成長余地が限られているのかもしれません。資料にも、大口以外の医療機関へ深堀りしていくとあり、国内では採血管準備装置も頭打ちなのがうかがえます。

もちろん海外展開も行っていますが、こちらは競合企業があるらしく国内ほどの勢いはありません。現在のところ、海外の売上比率は全体の約10%とのこと。

株価の方を見てみましょう。チャートが2007年からしかなかったのですが、リーマンショック前が1,000円前後で、成長期の2015年に最高値の3,400円近くがピーク。その後は業績が横ばいであることとリンクして、株価もヨコヨコな状態。業績の推移を気を付けながら長期で保有していれば報われた銘柄ではないでしょうか。ただ成長の鈍化を気にせずに放置していると、えらい目に合っています。

現在株価が1700円台でPER12倍、PBR0.91。今後も成長が難しいということであれば、妥当な株価という気もします。ただ安定したビジネスモデルな上、財務は無借金でキャッシュリッチ。配当利回りは3.8%あり、株主優待でコシヒカリ2㎏をもらえます。分散投資でディフェンシブに運用するなら、ポートフォリオの一角に入れておくのはいいかもしれません。ただ優待のコシヒカリ2㎏というのが少し寂しいですが。

今後の展望

主力製品が頭打ちで、海外も伸び悩んでいるのなら新製品の開発しかありません。しかし売上高をみる限り、採血管準備装置に並ぶ製品開発は順調ではないようです。おそらく、海外進出、顧客の深堀、新製品開発などはもう10年以上前から取り組み続けていることでしょう。そういう点では、現在のビジネスを水平展開して幅を広げるのが難しい分野なのかもしれません。

まとめ

昔あれだけバリューだバリューだと騒がれていた銘柄も、成長が鈍化すればただのバリュートラップになるのだと、しみじみ感じました。財務に余裕があり、研究開発や新規開拓に力を入れることができる環境にあっても、増収増益を続けることは簡単ではないようです。

これだけ安定したビジネスを構築し、財務も無敵なことを考えると、上場しているメリットは低いのではないでしょうか。そのようなことから、MBOの可能性もあるとすれば、そこに投資のチャンスがあるかもしれません。


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