かつてホールドしていた銘柄を、改めて見直すシリーズ。今回は、「小田原機器(7314)」を振り返ります。地味な社名のニッチな分野で強い企業ということで、バリュー投資家好みの銘柄。ただクソ決算を度々繰り出してきたことから「小田原危機」などと寒いことをつぶやいていました。
私がいつ買って、いつ売ったかが全く記憶に残っていないのですが、なんか損したことだけは覚えています。2009年に上場した小田原機器も、16年の歳月が過ぎ、相場にどのような爪痕を残したのか。そんな訳で、小田原機器の過去の業績と今後の展望について見ていこうと思います。
小田原機器のビジネスモデル

小田原機器は、交通機器の製造販売を行う企業。特に路線バス用の運賃箱など、バスのワンマン化に対応した機器を中心に事業を展開しています。
創業は、富士写真フイルム(現・富士フイルムホールディングス)の下請として、機械部品製造からスタート。1969年にバス用のワンマン機器を開発し、業界初の「硬貨循環式運賃箱」や「紙幣自動両替機付き運賃箱」を製造。路線バス用の運賃箱において、約40%の市場シェアを有するなど、ニッチな分野で強みを持ちます。
ただ小田原機器には、レシップホールディングスという強力なライバル企業が存在します。レシップもバス用機器を扱っており、運賃箱においては60%以上のシェア。バス用機器では小田原機器とレシップが業界を二分していると言っていいでしょう。ただ近年はレシップがシェアを徐々に伸ばしており、小田原機器がやや劣勢となっています。
小田原機器の業績

年度 | 売上高 | 経常利益 | 当期純利益 |
---|---|---|---|
2011年 | 19.2 | -1.5 | -2.3 |
2012年 | 24.3 | -1.6 | -2.0 |
2013年 | 26.9 | 0.9 | 0.2 |
2014年 | 36.3 | 2.1 | 2.1 |
2015年 | 45.3 | 2.8 | 1.8 |
2016年 | 35.2 | 2.2 | 1.3 |
2017年 | 31.2 | -0.6 | -0.3 |
2018年 | 33.4 | -1.0 | -1.1 |
2019年 | 62.2 | 2.6 | 1.9 |
2020年 | 47.8 | 2.1 | 1.3 |
2021年 | 35.8 | 1.9 | 1.0 |
2022年 | 46.9 | 0.3 | -0.4 |
2023年 | 39.3 | 2.2 | 1.9 |
小田原機器の売上ですが、2014年度に30億円台に到達後は、上がったり下がったりと安定しません。経常利益と純利益も赤字と黒字を行ったり来たり。バス周辺機器は、更新時期がくれば一斉に入れ替えがあったりするのが要因でしょうか。決算を精査していないのでよく分かりませんが、経常利益も一定の売上があれば黒字というわけでもありません。この業績を見る限り、収益性や成長性を理由に小田原機器を購入したいとはなりません。
ただ財務の方は、比較的良好。流動比率は158%近くあり、流動資産80億のうち30億が現金。ただ、2023年度に短期借入金が一気に17億ほど増え、2024年度第三四半期ではさらに10億の短期借入金が増えています。新紙幣に対応した機器の、入れ替え需要への対応資金と思われますが、その点がやや気にかかるところ。PBRでは0.8倍ほどなので、割安ではありますが、激安というほどでもありません。
小田原機器の株価

上場以来ではコロナショックを除き、600~800円をウロウロしています。2023年後半に急騰しているのは、株主優待が導入されたため。100株で2,000円のクオカードということで、優待利回りは2%ほど。たった2,000円のクオカードを新設しただけで株価が倍になるという恐ろしい世界。今後、財務の悪化や、一定数の個人投資家が増えれば優待廃止のリスクはあります。優待でしか株価を保つ理由がないので、廃止された場合は地獄を見そうな予感。
今後の展望

小田原機器の業績は、バス業界の動向に大きく左右されますが、国内における同業界は非常に厳しい環境にあります。近年も大阪南部の南河内を中心に営業していた、金剛バスが廃業となっています。人口減少による需要低下・人手不足が理由とのことですが、これはどの地域でも起こり得る事態でしょう。現実に、金剛バス廃業のニュースを皮切りに、路線縮小が各地で起こっています。
ただ、国内はかなり厳しい市場ですが、アジアを中心とした新興国では、これからもバス需要は高まってくるでしょう。小田原機器の顧客が地方自治体や国内メーカーだけだと厳しいですが、グローバルに展開できれば業績拡大の道が拓けるかもしれません。
しかし中期計画書を見る限りでは、海外進出について触れている部分はありませんでした。ちなみに競合のレシップの中期計画書では、取り組むべき事項の一番最初の項目に「海外事業の確立」とあります。このあたりの取り組みの差が、レシップに追いつけない要因の一つかもしれません。
まとめ

何となく「バリューっぽい」という理由で購入した小田原機器でしたが、改めて調べてみると、小田原機器を買う理由が全くありませんでした。ほぼ同じビジネスモデルであるにもかかわらず、徐々にレシップの後塵を拝しているのは経営力の差であることを感じずに入られません。
このバス機器事業界自体に高い成長余地があるように感じません。小田原機器よりも優良なレシップでさえもPERが7倍程度にとどまっているのは、この業界に期待している人が少ないからでしょう。
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